採掘オーナー・ティラカとの出会い

Country
Sri Lanka
Location
Ratnapura
Schedule
2014-06-27-2014-07-12
Target
Sapphire / Tourmaline / Aquamarine / Zircon / Spinel
宝石の町・ラトナプラにやってきた翌日。

以前よりコンタクトを取っていた採掘関係者の元へ。
ラトナプラの町からはちょっと離れた場所にあるため、
トゥクトゥクで向かうことに。



それが昨日も乗った赤いトゥクトゥク。
実はあの時、電話番号を交換しており、
朝早くから電話が掛かってきていた。

「今日、どこ行くの?あそこ行かないの?
 行こうよ!行こうよ!」

拙い英語で、電話越しに
超ハイテンションで楽しそうに話してくる。
わかった、わかった、
まあ、悪いやつじゃなさそうなので、
お願いすることに。

ドライバーの名前は、アルナ。
ヘラヘラしているけど、
常に笑顔でよくしゃべって、感じがいい。
スリランカの言語はシンハラ語とタミル語。
文字もカエルの絵文字みたいで、全然読めない。
でも、アルナは英語がそこそこ。
私たちと同じレベル。
意思の疎通が出来るので困ることはない。
ここ結構重要。

こうして宝石関係者の元に向かった。
まずはスリランカの採掘作業とは、を教わるため、
いろいろ見学させてもらう。
そこでわかったのは・・・

*採掘は、5人~8人ぐらいのチームで行う。
 ちなみにオーナーは見ているだけ。
 大規模な機械式の採掘現場もあるが、
 基本的には人海戦術の採掘。
*宝石があるのは、地下深くの土の中なので、
 何日間か穴を掘りそこから土を出す。
 何段階かに分け、土を洗い、
 一番最後に、宝石を出すための洗う作業がある。
*出た宝石は、売り払って、
 採掘権を持っているオーナーと地主、
 採掘労働者に分配される。

ということ。

ここへ来る前のイメージは、
アメリカのダイヤモンド採掘のように、
個人戦で、川とか大地とかの土を掘り、洗い、
宝石を見つける、という感じ。
でも、全然違ってた。
宝石が出るかどうかわかるのは、
最低でも一週間で一回だなんて!!!

なので・・・

*宝石を見つけた場合は、買い取る必要がある。
*宝石が出そうな場所を掘るには、
 採掘権が必要なことことと、
 そういった採掘システムのため、
 そもそも外国人が個人で探すことはほぼ不可能。
*採掘に参加したり、見学する場合は、
 職人さんたちに、毎日謝礼を払う必要がある。

その結果・・・

私たちが出来ることは、チームに参加し、
一緒に、宝石を洗い、
見つけた宝石を買い取るということ。

『これで行こう!!!』

とお願いし、スタートしたのだったが・・・

毎日、その方の知りあいの採掘現場など、
いろんな現場には連れて行ってくれるのだけど、
毎度毎度見学だけ。
職人さんのまかないをいただいたり、
採れた小さな石をもらったり、
それなりに楽しいのだが、
見ててもなにもはじまらない。
目的は見ることじゃない。
採掘するためにここへ来たのだ。
採掘の話をしても、一向に参加させてもらえない。
毎日、指定されたトゥクトゥクを使い、
職人さんに謝礼も払い、
どんどんお金と時間を浪費するだけ。
う~ん、これはどうしたものか。

最終的に、これはよくない!!!
誰かにまかせちゃうと、
自分たち主体の行動が出来ない!!!

ということで、
『これからは自分でいろいろ動いてみます。』
と数日間お付き合いいただいた感謝の気持ちと、
今後の事を丁重にお伝えし、
ここラトナプラでゼロからスタートすることに!!

とはいえ、実際は、ゼロってことでもなく、
実はこの数日間の間に、
その採掘関係者の方とは、別のルートで、
ひとりの採掘オーナーと出会っていた。

それが、この人。



ティラカ!!!

なんと日本語も話す、
とってもキュートなスリランカ人。

採掘チームの人達もいい人ばかり。
こういった採掘現場のイメージって、
強制労働で、やらされている感じだと想像してたけど、
実際はみんな楽しそうに作業している。



採掘の作業は、
掘った土を寄せる人、
たらいに土を入れて運ぶ人、
ホースの水を土にかけて洗う人、
大きな石を取り除きながら土を洗う人、
洗った砂利を別の場所に移す人、
洗ったあとのいらない石や砂を片付ける人など、
分業制で、流れ作業。

採掘の仕事は、オーナーだけじゃなくて、
職人さんたちも一攫千金を夢見て、
宝石を掘り起こすのが楽しみのようで、
自らこの仕事を選ぶ人が多いと聞いた。
スリランカはそんなに裕福な国ではないので、
普通に働くよりも、採掘現場の方が稼ぎがいいという。
あくまで、宝石が出ればだけど。

実は、彼と偶然出会い、
見学させてもらった時、
ザルで洗うのやってみたいの!とお願いすると、
「うん、いいよー!」
(これ彼の言葉そのまま。ローラみたいな感じの話し方)

見も知らずの日本人、
特に差し入れや謝礼を払ったわけでもないのに。

基本的に採掘の仕事は男性しかいない作業現場なので、
女性はいないし、女性が作業をするなんて、ありえない!?
って感じで、ちょっとみんなびっくり&興味津々。
でもなんだか楽しそうに見てる。



で、この洗う作業。
アメリカでのダイヤモンド採掘と同じ要領かと思ったら、
まったく違う。

まず、結構深めの泥水の中に体ごと入る。
衛生的な水じゃないし、ちょっと発酵した臭いだし、
冷たいし、汚れるし・・・
たぶん、普通の感覚でいくと、
自ら入りたがる女子はいないと思う。

でもそれを気にしてたら、何も出来ない。
作業に加わる気満々の準備で来てるから、
汚れてもいい格好だし、やっと巡ってきたチャンス。
職人さんたちはいつもこの環境で作業してるんだ、
私にだってできるはず。
若い職人さんに教わり、トライトライ。



心を決めて入ってしまえば、なんてことない。
すぐに慣れて、何も気にならなくなった。

土を洗う作業で使うのが、この大きなザル。
スリランカではワッティと呼ばれている。
ダイヤモンドを洗っていたザルとはまったく違い、
竹を編んだような手作りのザルを使って土を洗っていく。
大きなザルを上手にまわすと、中に入れた土が洗われ、
余分な泥が落ちていく。

ただこのザルを回す技術が、結構難しい!
お兄さんは上手にザルの中の砂利が回転していくのに、
私がやると、水だけがじゃぶじゃぶして、中の土が回らない。
見ているのと実際やってみるとでは、だいぶ感覚が違う。

え?どうすれば、そんな風に中の砂利が回転するの!?

何度も何度も見本を見せてもらってトライすると・・・
ちょっとずつコツをつかみ、
中の砂利を回せるようになってきた。
腕のチカラで回すっていうより、ヒザを曲げたりしながら、
体全体を使って踊るように回すのか。
お兄さんもうんうん、うなずいてくれる。
だんだんできるようになると、楽しい!

ついに念願の
宝石が入ってる土も洗わせてくれた。
みんなが1週間ぐらいかけて掘り起こし、
土を洗って作業した、
一番のお楽しみタイムの砂利を、1杯分。



まず、宝石の神様に手をあわせる。
みんなやっていたので私も。
チャンスをくれたティラカとみんなに感謝して、
自分で洗った砂利をチェックしていく。

ダイヤモンドの時と同じで、
宝石は重いので下の方に沈んでいる。
一人で見てもどれか全然わからないので、
ティラカに一緒に見てもらった。
ゆっくりゆっくり余計な砂利をよけていく。

んんん!!!

サファイアが出るかもと思うとドキドキする。



・・・何も見つからなかった。

そう簡単に、宝石は出てこない。
「ないねー」

と笑うティラカの笑顔は本当にまっすぐだった。


一段落すると、休憩タイム。
タバコを吸ったり、甘いお菓子や紅茶を飲んだり、
みんな楽しそうに話している。
小さな小屋の中にはかまどがあって、
火をたいてお湯を沸かし、紅茶を入れてくれた。

スリランカはセイロンティー紅茶で有名。
茶畑がいくつもある。
イギリスの植民地だったスリランカは、
セイロン島と呼ばれ、紅茶の栽培が盛んに行われ、
今もお茶の生産量は世界第3位だそう。
(以上ネット調べ。)



そんなセイロンティーの本場スリランカで、
ティータイムのセイロンティーをいただけるなんて!
しかも、ココナッツで作った手作りカップ。
なんとも言えない味わい深さ、
手で持っても全然熱くないし、ぬくもりを感じる。
香り高くほっとさせてくれる味だった。

ちなみに、みんなが好きなお酒はこれ。
ティラカのところに連れて行ってくれた、
ここの地主のおじいちゃんにもあげたら、喜んでくれた。



この出会いがあったから、
ティラカに相談すればなんとか、
採掘も出来るんじゃないかと思っていた。

なにより、この時、他の現場では当たり前のようになってた、
謝礼を渡そうとすると、「いらないよ!」だって。
もちろんいろいろお世話になったので受け取ってもらったけど、
こんな風な対応はここだけ。
損得なしで受け入れてくれてたってことがよくわかった。

ティラカにまた来てもいい?と聞くと、
「いいよー!」だって。
宝石を出す作業は、1週間~10日に一回なので、
その時、連絡するね。と約束。

この日は、
とりあえずザルの使い方をマスターするため、
ひたすら練習させてもらうことに。



余談だけど、この後、知らぬ間に、
ヒルに太ももの付け根を襲撃され、流血!!!
パンツが血まみれ!!ぎょえーーーっ!!
全然血が止まらなくて、マジで焦った。
この事件があってから、気を引き締め、
ズボンの裾を必ず靴下の中にインして、
足下の肌の露出をなくして、作業するようになったとさ。