知られざるゲストハウスの秘密

Country
Sri Lanka
Location
Ratnapura
Schedule
2014-06-27-2014-07-12
Target
Sapphire / Tourmaline / Aquamarine / Zircon / Spinel
ラトナプラに来て、1週間。
ずっと滞在している
ラトナジェムハルト・ゲストハウスは、
とっても居心地が良い。
実は、ここにいれば、なんでも出来ちゃうことが判明!



最初は、ただの宿かと思ってたけど、
オーナーのラトナは、宝石商だった。
朝は、宿の中にあるジュムセンターにいるので、
遊びに行くことに。



朝はなぜか上半身裸のラトナ。
この部屋と彼の自宅と直結してるし、
この時間帯は半分プライベートタイムなのかな?
だいぶ知った仲になってきたから、
気にしなくなったのかな?
お願いして、いろいろな石を見せてもらう。



ラトナは、宝石商として、
きちんとした資格を持っているらしく、
免許証みたいなカードも飾られていた。

これを持っているとなにが出来るのか
よくわからないけど、
スリランカではそうゆう資格制度があるらしい。



私たちが知りたい石のことを聞くと、
宝石の本で調べてくれたり。



サファイアの原石の中でも、
質の良い物を見せてくれたり。



やっぱり机の上とかに出ているものは、
そんなに良い石ではないらしく、
本当にいい物は、隠してあった。



そして原石だけなじゃなく、
宝石に興味を持ちだした私たちに、
ちょっと変わった石を見せてくれたりも。



この石、普通に見ると
ブルーグレーに、
うっすらパープルが入ったような色なんだけど、
白熱球のライトを当てると・・・



濃いピンク色に。

カラーチェンジガーネットという石で、
その名の通り、カラーチェンジするみたい。
全く別の石みたいに、くっきり色が変わる。
最初はただ、
白熱球のオレンジ色が映ってるだけじゃないの?
と思ったけど、
同じような色の他の石では特になんの変化もない。
超不思議。

その他にも、スターサファイアも、初めて見た。
私が採った石も磨くとこんな風になるのかな。
星の線がハッキリ見えるものほどいいらしく、
反応が強いものは、ライトの下だけじゃなくて、
太陽の下でも、くっきり見えた。



こうやって見せてもらうと、
今までまったく興味がなかった
ルース(カットされ磨かれた裸石)が、
欲しくなってくる。

自分で誕生石を採るのが目的で来たんだけど、
ルースが欲しい。

欲しい。

欲しい。

ください!!!

というわけで、
まんまと、買っちゃった。

偽物ではない!
ボラれてない!
ラトナを信じた私!

正直、この町に来たとき、
町を歩いていると、
いろんな宝石商人に声をかけられた。

どの人もうさんくさく、
なにも知らない日本人に宝石を高く売りつけよう!
というのが見え隠れして、すべて無視していた。

でも宝石を買うには、これじゃダメだ!
とラトナから勉強しようと思ったのだった。
それにラトナは私たちが宿のお客さんだからか、
全然押しつけてこない。
欲しければ買えばいいよ!というスタンスだったから
信じてみようと思った。
だから、これはその第一歩。



オーナーのラトナ以外にも、
この宿のスタッフはみんな優しい人ばかり。

フロントなどを担当するアソーカは、
とっても働き者。

朝早くから広い宿を掃き掃除、拭き掃除。
宿で貸してくれるタオルとかシーツとか、
お洗濯もおてのもの。
有料だけど、お願いすれば、お洗濯も引き受けてくれる。
一度町を探しに行ったけど、
この町にはお洗濯屋さんはあっても、
乾燥機はどこにもなかった。

どうやって乾かすのかというと、トタン屋根に天日干し。
だからどうしても雨の日はランドリー日和じゃない。
風の強い日は飛んでっちゃったりすることもあるけど、
きちんと乾かして、たたんで返してくれる。



ちなみにお部屋はこんな感じ。
自分の部屋は、わさわさしてるので、
空き部屋をパチリ。
蚊がいるので蚊帳付きのお部屋。
蚊帳の中で眠るなんて、小学生以来な気がする。

結構広くてゆったりしたお部屋に、
テーブルも付いているので、
採ったり買ったりした石のチェックもしっかりできる。
広い窓からは採掘現場や遠くの山も眺められて、
開放感も抜群。

スリランカは織物が有名らしく、センスのいい配色と、
しっかりした作りの布もよくお店で売られていて、
お部屋のベッドシーツも枕カバーにも使われていた。
コットンが気持ちよくて、
見た目もよくてお気に入りになっちゃった。
アソーカがお掃除してくれるから、お部屋も清潔だし、
快適快適。



そして宿の中には、鉱物や宝石の展示も。
といっても何の石なのかよくわからない。
鉱物・宝石好きの方ならば、もっと楽しめるのかも!?

ショーケースの中には、サファイアやルビーも。
ちょっとしたミュージアム。
こんな石が採れるんだ~と興味津々。



ショーケースのあるフロアは、レストランフロアで、
ここに気になる物があった。
ずっと気になってたけど、オブジェかなと思ってた。
これなんだけど・・・



どうも宝石を削る?磨く?ものっぽい。
動いてるの見たことがなかったから、
宿のお客さんに見せるためのオブジェなのかなと。
そう思ってたら、現役のマシンみたいで。

バッグの中をごそごそ・・・



出てきたのは、各国で採ったペリドットやフローライト、
買ったアメトリンなどなど・・・

『これってカット出来るの?』

「まかせとき!!!!」

ということで、一番カットしてみたかった
ロジャリー鉱山のフローライトをお願い!!!



宿のスタッフのラサンタが、カッティング!!!
昔は、カットをするお仕事をしていたみたい。
だから普段はやってないけど、
頼まれれば空いた時間でカットしてくれたりするそう。



実際にカットするのを見るのは初めて。
そもそも宝石というのは、条件がそろってこそ、
宝石と言えるらしい。
その条件は3つあって、

1.とにかく外観が美しい。
2.希少性がある。(あんまり産出しない)
3.耐久性がある、硬い。
なんだとか。以上ネット調べ。

この3に当たるのが、今回のお話しで、
石には硬度というのがあって、
硬ければ硬いほど、宝石としての評価が高いという。
モース硬度っていうのがあって、
一番硬いのはダイヤモンドで、モース硬度10。
サファイアはその次に硬い、9なんだって。
フローライトは硬度が低く、カットが難しいと
ネットに書いてあったけど、
ラサンタに聞くと、別に問題ない!とのこと。

硬度が低い石は、やわらかいので、
逆を言えば簡単にカットができるということ。
その代わり、ちょっとしたことで割れたり
傷になったりしてまうので、あまりやりたがらないみたい。

ラサンタも、もし割れたらごめんね、
でもベストを尽くすと言っていた。



そしてそして、
完成したのが、これ!!!!



お見事!!!

自分で採った、あの原石が
こんなキラキラのルースになっちゃうなんて!
考えたこともなかった。

記念すべき、第一号。
ラサンタ、いい仕事するな~!

でも、しまった!!!
旅の途中でほとんどの石を日本に送っちゃった。
こんなにキレイにカット出来るんだったら、
もっと持っていれば・・・

それに今までは、
ただ単に母岩が付いた大きい石とか、
なんとなく色がキレイな石を採っていたけど、
カットするには、大きさだけじゃなくて、
透明度が高く、
クラック(亀裂)、
インクルージョン(内包物)が少ないものじゃないと、
ダメみたい。

しまった!!!
石を採るとき、
そんな所はまったく見ていなかった。

持っていた石を見ても、
クラックやインクルージョンがいっぱいなものばかり。
カット出来る石をラサンタに見てもらう。
これは・・・?

NO!

NO!

NO!

・・・ほとんどが、NO!

基本的にクラックがあるものは、
仕上がりがよくならないだけでなく、
カットしている途中で、割れちゃう可能性が高いらしい。
よく見ると、クラックが全体に入っているものばかり。

カット候補に残ったのは、
アメリカで採ったクォーツ。
ボリビアで買ったアメトリン。
ノルウェーで採ったペリドット。
チェコで採ったパイロープガーネット。
など、数粒。
ガビーーーン。少ない。

そんな中、私たちの中で、
大勝負に出るか悩んだ石がひとつ。

それがこれ。



ノルウェーで採ったエメラルド。

小粒のノルウェーのエメラルドは、
送って届かなくて無くなるのが怖かったし、
小瓶に入るものなので、ずーっと持ち歩いていた。
だから、採ったもの全部あったのだけど、
これは、その中の1つ。

私たちがスーパーグリーンと呼ぶ、
透明度も高く、グリーンの色合いも最上級。
(私たち的に+私たちが採った中では)

そして、なにより、カットが出来そうなサイズ。

ラサンタに聞いてみると、
他のエメラルドは全部NO!だったけど、
これだけは、たぶんOK!だというお答え。

エメラルドのルースは欲しいけど、
これぐらいのサイズのスーパーグリーンは、
これだけ。

クラックもあるから、カットして失敗する可能性もある。

どうする?

どうする?

どうする?

うぬぬぬぬ・・・
ラサンタ信じた!!!!

そして

そして

そして・・・



おっ、お見事!!!

若干フチがガジガジしてるけど、
それは、もとある石を無駄なくカットしてくれた結果。

もともとの石も
スーパーグリーンが綺麗だったけど、
それ以上に照りが出て、美しい。
なんだか蛍光色みたいな光の放ち方。
生まれ変わった!

わーい!
ノルウェー産のエメラルドルース♪

自分で採ったエメラルドが、
ルースになった♪

ラサンタ、現役じゃないのに、やるーー!!!

ということで、
まだまだここに滞在する予定なので、、
他の石もカットをお願いすることに。

ちなみに、私がいた6月~7月のラトナプラは、
雨の日も多く・・・



どしゃぶりの日も結構あって、
そんな日は、採掘作業も中止。
(私じゃなくて、現場自体が)

外に買い物に行くのも大変なので、
おとなしくお部屋でのんびり。



採掘できないのは残念だけど、
たまにはこうしてゆっくり体を休めるのもいいな。

雨がトタン屋根や木々を打つ音がなんとも心地いい。
潤っていく植物たちが青々としてる。
なんだか久しぶりに歌が歌いたくなって、鼻歌。
時間がたっぷりあるって、心に余裕をいっぱいくれる。
あれもしなきゃ、これもしなきゃ、って、
せわしない旅にしなくてよかった。
ゆったり時間が降り注ぐ。

夕方にはすっかり雨も上がった。
空の移り変わりをゆっくり眺める贅沢な日だった。