Japan2017①〜世界一の宝石サンゴ探し〜

2017年8月、高知県室戸沖・・・



2014年の秋、世界一周から帰ってきた私たち。
その後も世界を旅して、採掘&採取をしたりしてるけど、
実は、日本で宝石を採った経験はなかった。

そんな中、2015年にテレビ特番として放送されたのが、
高知県室戸で行われている珊瑚漁のドキュメンタリー。

【珊瑚漁 = 宝石サンゴ】

宝石サンゴ(コーラル Coral)は、
日本で採れる宝石のひとつ。

しかも・・・
私が好きで集めている切手の中で、
特にお気に入りの宝船にも、赤珊瑚が描かれている!
(桃太郎が持ち帰った金銀財宝の中にも珊瑚があったはず)



まさに、日本の宝。

高知県の室戸で採れる赤珊瑚は、世界で一番美しいとされ、
その中でも、特に色が濃い「血赤珊瑚」が最高級品だという。

これは気になる!!!

が!

高知の珊瑚漁は、漁業権がないとできない。
高知以外にも、珊瑚漁をやっている地域はあるけど、ネットに情報なし。
基本的にはどこも漁業権や許可がないと採ることはできない・・・と思う。

調べていくうちに『日本で宝石サンゴを採る』、
これは現実的ではないのかもと思い、
当時は、ネットで調べただけでなにもしなかった。

月日は流れ、2017年。テレビ特番でまた珊瑚漁が放送された。

番組を見て知ったのだが、
珊瑚漁は、1年の内、8ヶ月間だけで、
放送から2週間後の8月1日から再開されるらしい。

自分で採れなくてもいいので、漁を見てみたい!!
と最初に言い出したのはもうひとりの方で、ついに行動に出た・・・。

『珊瑚漁に連れてってくれる漁師さん探してます』
と関係してそうな場所にいろいろ電話をかけまくる。
が、断られまくり。

・・・どこもムリムリムリと、素っ気ない。

珊瑚漁の情報はネットを調べてもほとんど出てこない。
いろいろ企業秘密的なこともあるのだろう。
普通に考えて、私たちを同行させるメリットはない。

まぁ、世の中そんなもんでしょう。
内心ホッとしていたのは私の方。
と言うのも、興味を持っていたものの
正直、宝石サンゴをあまりよく知らなかったし、
ちょっと古くさいイメージで、宝石としての魅力はそんなに感じていなかった。
漁に同行できたとしても、見るだけなんてきっと物足りない。
第一、私は船にめちゃめちゃ弱い。
漁船は地獄以外のなにものでもないはず。
ちょっとだけ乗り気だけど、船に乗る気は・・・。

でも、もうひとりの熱は半端ない。
最後の希望は漁師さんに直談判!
と、直接お話をしたのが、
今回、同行させていただいた、宝龍丸の岡村さん。

私たちが、世界中で宝石を採っていること。
宝石は中々採れないことを理解していること。
何日か乗船して見学したいこと。
とりあえず思いの丈を伝え、このサイトも見てもらった。

「まあ、とりあえず来てみたら。」

と、よくわかってなさそうだったけど、了承をもらった。

なにぃーーー!?
実現可能になってしまった。
むむむ、でもこれはチャンス。
こうなったら腹をくくるしかない。

善は急げ。
時間が経つと向こうも面倒になったりするし、
熱も冷めちゃうかもしれない!
連絡から一週間後、室戸に向かった。



室戸の珊瑚漁は、夜明けから午後3時まで。

今回、漁に参加し、知ったことがいろいろあった。
まず、珊瑚にはいろいろ種類があること。
大きく分けると2種類あり・・・

一般的に珊瑚と言われ思い浮かべるのは、造礁サンゴ。
サンゴ礁を形成する珊瑚で、浅い海に生息。
青い魚とかがお家にしているダイビングの映像とかで良く見るあれ。

もうひとつは、宝石サンゴ。
宝石サンゴは深い海に生息している。
ちなみに、珊瑚は植物でも鉱物でもなく、動物らしい。
珊瑚が動物だなんて考えたこともなかった!

室戸では、
室戸沖の約100メートルほどの海底にある宝石サンゴを獲っている。
獲れる宝石サンゴの種類は、赤珊瑚・桃色珊瑚・白珊瑚。

高知県では、室戸の他に、足摺という場所でも珊瑚漁は行われているが、
室戸がナンバー1だと言われている・・・ だからここに来たかった。



室戸で行われている珊瑚漁は、伝統的なスタイル。

網に重りを付け、海底へ落とす。
潮の流れによって自然に網が動くのを待ち、偶然、珊瑚が網にひっかかるのを待つ。
そんな原始的な感じで本当に珊瑚がかかるの!?
初めて知ったときはちょっと信じられなかったけど、
これが昔から伝わるやり方なんだそう。



重りは石もあれば、鉄もあれば、チェーンもあるらしい。
そして、石も34キロ、31キロ、28キロといろいろ種類があり、
また、網も柔らかさがいろいろあるそう。

岡村さんは一回のタイミングで、網&重りを3セット落とす。

ちなみに、現代の漁業はハイテク。
自分が今いる位置はもちろん、海底までの距離、
船の下にどんな大きさの魚がどれくらいいるかも、
どこに岩場のくぼみがあるかも、全部わかっちゃうんだって!



一見、適当に網&重りを落として待つだけの漁かなと思いがちだけど、
場所選び、道具選び、潮の流れを読む、
といったことが重要なのだということがわかった。

あとは、30分から1時間ほど、網が動くのを待って、網&重りをあげる。
これを岡村さんは、1日5回〜8回繰り返す。




これはいろいろ網に引っかかってるけど、ほとんどが宝石サンゴではない。
赤く見えるのに違う〜!?

そんな中、初日、第一投の3つめ網に、宝石サンゴがかかった!!!



超ちっちゃいけど、まぎれもない赤珊瑚!

岡村さんからしたら、全然お金にならない珊瑚みたいだけど、
赤くて、にょきにょきしてて、
ひょ〜!ちっちゃな枝っぷりがかわいらしい!

初めての漁で獲れた赤珊瑚。
うわぁ、本物を生で見るとやっぱり違うな。
水深100mの世界からやって来たと思うととても愛おしい!

大体いつものパターンなのだが、
宝石採掘現場へ行き、採掘している人とふれあったり、
自分で見つけたり、採れたての原石と出会ったりすると、
それまで大して興味もなく、魅力もわからなかった宝石が、
とても好きになってしまうのだ。

さらに、このあともちらほら赤珊瑚が・・・




ちなみに、最初に獲れた珊瑚は、生。
生きている珊瑚だったもの。

この2つの珊瑚は、落ち木と言われる、もう死んでいる珊瑚。
寿命が来て枯れた珊瑚や、折れて死んでしまったものが、
時間が経って、色あせて、貝がまとわりついたり、浸食されている。
でも、意外と外側だけで、中はしっかり美しかったりするそう。

今室戸では生はほとんど獲れず、主に落ち木の珊瑚を獲る漁なのだとか。

そんな種類があるなんて、知らなかった。

そして、もう一つ覚えたのが、
宝石サンゴと、そうでない珊瑚の見分け方。

これが最初はよくわからなかった。



見た感じ、左の桃色のほうがいいような気がするけど、
岡村さん曰く「右は宝石サンゴで、左は宝石サンゴじゃないよ」

見分け方は触手の数だそうで、
宝石サンゴは『八放サンゴ』と呼ばれる「8つの触手」を持つ珊瑚。
もう一つは『六放サンゴ』と呼ばれる「6の倍数の触手」をもつ珊瑚。

あとで写真を確認してわかったけど、
左のピンクの珊瑚は、触手が12(6の倍数)なので『六放サンゴ』
確かに宝石サンゴじゃなかった。



触手が見えにくかったりするのもあるから、修行が必要だ。
最初は全然わからず、「これは?」と岡村さんに質問しまくりだった。
う〜ん!難しい!見た目はどれも宝石サンゴに見える〜!
小さい珊瑚だと肉眼だと分かりにくい。
ルーペを持参するんだったなぁ。

さらにこの日は、大きな白珊瑚も・・・



えっ・・・

大きいけど、もはや岩と言われてもわからない・・・。
形が珊瑚っぽくない。
似たような物体はよくあがる。

ちなみに、
岡村さんもよくわからない時は、端っこを折って断面を確認。



中の芯のようなところがピンクになってるのは、白珊瑚なんだとか。
同じように、赤珊瑚や桃色珊瑚は、中の芯のようなところが白くなっている。

これが室戸で獲れる珊瑚の特徴。



余談だけど、この珊瑚漁、一番の心配は船酔いだった。
前に釣り船に乗ったときは、横になっても船酔いを止めることができなくて、
乗船から下船までずっと吐き気と闘い続けた。
船酔いをする人間にとって、漁船でずっと海の上に停泊し続けるなんて、
地獄以外のなにものでもない。
珊瑚漁は一度海に出たら13時間くらい戻って来ないと聞いて、
本当に気持ちが折れかけた。
そして、きっと迷惑をかけてしまう。
珊瑚漁、見たいけど、行きたいけど、行きたくない・・・でも行きたい!!
行けるとなったからには、覚悟を決めて行くしかない!!
なので、今回は、薬局で一番長く効く酔い止めを準備し、
ネットではあるが酔わないための予防策を入念に確認し、
漁に出た。

が、やっぱりちょっと気持ち悪い。
台風が去ったばかりで結構波もあるし、うねりも残っている。
走ってる間はいいけど、停泊すると横揺れがキツイ!
実は、岡村さんも船酔いするらしく、ご理解いただき、
漁の最中も、しばしば、こうやって寝させてもらった。

でも、準備のおかげか、しっかり漁の見学はできた。





珊瑚漁同行2日目。
この日も夜明けに出港。
太陽が昇る前は涼しくて気持ちがいい。
朝焼けもきれい。




1日目で、漁の流れは理解した。
と言っても、若干の船酔いで私にできることはないし、
漁の邪魔にならないように、見ているだけ。

珊瑚が獲れるかどうかは、潮の流れが重要だそうで、
潮が動くというのは、海水が動くこと。
潮が動いていないと、落とした網が広がらず、珊瑚がかからないのだとか。
海面の潮と海底の潮が逆に動くこともあるそうで、
素人の私にはまったくわからない。

ちなみに、
昨日、今日とあまり潮は動いてないみたい。
波はあるのになぁ。

そんな日は期待薄。



とはいえ、網をあげるとき、
ワクワクしながら、岡村さんのもとへ。

すると・・・



何かかかってる!!

おおー、昨日よりも大きな珊瑚!!

なにやら良さそう・・・

じゃーん!



いろいろ身にまとった赤珊瑚!

かっこいい!!
くびれ具合もセクシーだし、
まとわれ方も歴史がある感じで味わい深い!

と、思っていたら・・・



いきなりペンチでパチンパチン。
ナイフで、シャッシャッ。

がびーーーーん!!!

何をしているのかと聞くと、
珊瑚を売るための入札会に出すには、
珊瑚ではない部分はカットして綺麗にするらしい。
余計なものが付いていると、正確な重さがわからなくならからだとか。



すっきり綺麗。

こうしてみると、地肌がよく見えて、赤々として確かに美しい。
でも、私的には、獲れたてそのままのほうが魅力的。
あぁ、そのまんまが好きだったのになぁ、なんだかもったいないなぁ。

ここに来る前にネットとかで珊瑚のこと調べてたけど、
みんな綺麗になってた。つるっつるだった。
その理由がそういうことだったとは・・・。

ちなみに岡村さんが使う白い網は一番柔らかい網で、
もし珊瑚がかかったら枝とか折れずに、やさしく包み込んで上がってくるそう。

ああ、これまでで一番大きくて、綺麗な赤。
岡村さん曰く、色が薄いように見えるものでも、
磨くと赤くなったりするそうだけど、これは赤が綺麗だった。



この日は、私的には大漁。
岡村さん的には、大きいのがなくてあれだったみたいだけど。

カゴの中の赤珊瑚たち。
赤珊瑚と一言で言っても、オレンジっぽいものから、
深見のある赤、赤紫っぽいもの、
色が薄かったり濃かったり、鮮やかだったり渋かったり様々。
どの珊瑚もそれぞれにいいなぁ。

ちなみに、私的なこの日の一番はこの赤珊瑚。



母岩付き。

やっぱりこれも岩部分を取り除くそう。

もったいない!

もったいない!!

このままがいいのに・・・と力説していたら、
記念に、これいただきました♪ わあああああ♪

どうやら岡村さん、どうせ私たち、最初の一日だけで、
二日連続で漁に来るとは思ってなかったみたい。

私もそう思ってた。一日でギブアップだと思ってた。
でも酔い止めのおかげで問題なし!
宝石サンゴの魅力を知ってしまった。
海の宝くじみたいな漁のワクワクを知ってしまった。
海の底からあがってくる真っ赤な珊瑚に会いたくて。

私たちの珊瑚漁にかける想い、伝わったのかな。

岡村さん、ありがとうございます!!!

エピソード②→
[Japan:Red Coral]